ヴァンパイアの一族を描いた〈アルジェノ&ローグハンター〉シリーズや、ヒストリカル・ロマンスを中心に多くの作品を発表しているベストセラー作家。幼い頃から物語を書いていた彼女は、作家という職業に就けたことをとても幸運に思っているという。読者に望むのは、彼女の本を読んで日々のストレスから解放されること。もし時折笑ってくれたら、それは大きなボーナスだ、と語る。

愛と微笑みの作家、リンゼイ・サンズ。ページをめくるたびに微笑んでしまうようなユーモラスな作風に定評がありますが、今回の作品では声を出して笑ってしまう場面が多々ありました。舞台は12世紀イングランド、時の国王ヘンリー二世と愛人のあいだに生まれたロザムンドは、母を亡くして以来、王家のいざこざから離れた修道院で静かな生活を送っていました。シスターたちを親代わりに成長した彼女でしたが、ついに修道女となる前日、突然現れた父に結婚を命じられます。命を狙われた王が、娘に危険を及ばせないため考えてのことでしたが、ロザムンドには知るよしもありません。しかも王は婚姻が解消されたりしないよう、その日のうちに“完全なもの”にすることまで要求してきたのです。当の無理難題を押しつけられたのが、地方貴族の息子アリックでした。婚約者に裏切られ、女性には二度と心を許さないと決意した直後に、王の絶対命令で結婚させられる羽目になった彼は、感情を殺し、ただただ自分の任務──初夜を遂行しようと、ロザムンドに対峙します。ところが彼女は思いもよらぬ反応を見せて……詳細は実際にお読みいただくとして、これまでの担当作のなかでもっとも印象的な初夜だった、ということだけここでは申し上げておきたいと思います(笑)。望まぬ結婚から始まったふたりの、キュートで心温まるロマンスをお楽しみください。